恋は蜘蛛の巣のようなもの

 大学三年生の私は愚かにも恋をしてしまった。相手は同じ学科の女子で、伸長が少し高い趣味の合う子である。愚かにもというのは、望みの薄い相手に対して叶わぬ想いを抱いてしまったことである。とはいえ、かつては望みがなかったわけではない。

 

 彼女との接点を得たのは一年生のころで、キャンパス内を一人で迷うような少年少女たちは音楽の趣味ですら大きく盛り上がれるのである。仲をそれなりに深めたある日、なんと私は彼女からとあるインディーズバンドの箱ライブに誘われたのである。二つ返事で了承し、そのライブを楽しみに待つ5か月間で、私と彼女はなんと二人きりで遊びに行くことは優に15回を数えた。水族館、海、花火大会、スポーツ観戦…今思えば何と輝かしい日々であることか。しかし、ライブ以後にコロナが流行り、ぱったりと連絡は途絶えてしまい、そのまま一年以上が経過し、今に至る。

 

 コロナ禍であろうと連絡を取り合う人というのはいるものである。しかし、こうして何度も遊んだ相手から一切連絡がこないというのは、おおよそ嫌われたのであろう。心当たりと言えばいくらでもある。しかし、ライブ後までは全く彼女は意中の人というわけではなく、ただの趣味の合う人でしかなかった。これが苦しいのは連絡が取れなくなってから彼女を想ってしまったことである。これがまた悔しく、むしゃくしゃし、頭の中に有象無象の思い出がフラッシュバックするのである。それがなんだが情けなく、行き場のない怒りすら浮かぶのである。

 

 この思いをくすぶらせ続けても精神衛生上よろしくないのは明らかだが、取り払うことは恋愛経験の皆無な元絶食系男子にはいささか難しい。いっそのこと電極でも脳に挿して彼女にまつわる思い出を消し飛ばせないだろうか。

 

 まったくもって度し難い